こんな症状、あなたならどうする?

母乳育児で、こどもの白血病のリスクが約20%減少する!?

投稿日:

こんにちは、Dr.アシュアです。今日は、JAMAの姉妹紙であるJAMA Pediatricsからの論文をご紹介したいと思います。

テーマはズバリ、母乳栄養と小児期白血病の発症についての関連性をみた、メタアナリシスです。

JAMA Pediatr. 2015 Jun;169(6)

Breastfeeding and Childhood Leukemia Incidence: A Meta-analysis and Systematic Review.

Amitay EL, Keinan-Boker L.

原文はこちら

はじめに申し上げておきますが、僕は母乳至上主義ではありません。世の中どう頑張っても母乳がなかなか出ないお母さんもいますし、お母さん自体のご病気が影響して母乳をお子さんに与えられないケースもあります。基本的に、お子さんが元気に大きく育ってくれれば、母乳だって人工乳だっていいんじゃん!?というのが僕のスタイルです。

しかし、今回の論文は、母乳がなかなかでないお母さんも出来れば半年は母乳続けようね!と言いたくなる結果です。

論文の結論を先に述べておきます。

注意ポイント

このメタアナリシスの結果に基づくと、6か月以上の母乳育児によって、小児白血病症例の14%〜19%が予防される可能性があります。

繰り返して言います。

母乳育児を6か月以上続けることで、小児白血病患者が14~19%減少する可能性があると言う結果です。

それでは、論文の中身の解説に行きましょう。

スポンサーリンク

 

論文の背景・重要性

小児がんは先進国における小児および青年の死亡原因の主要な原因であり、その発生率は毎年0.9%増加します。

すべての小児がんの約30%を小児白血病が占めているが、その病因はまだほとんど知られていません。

日本でも、がん=悪性新生物は、小児の死亡原因の中で大きな割合を占めています。

平成26年の政府統計から一部引用します。

赤字で示したところが悪性新生物です。

5歳以降の小児・青年の死因において、悪性新生物が占めている割合が大きいことが分かります。

今回の論文の重要性が分かっていただけますでしょうか。

 

論文の目的-Objective

これは、もちろん 母乳育児と小児白血病の関連に関する科学的証拠のメタ分析を行うこと、ですね。

 

方法-Method

データソース

1960年1月~2014年12月までの間に出版された『母乳育児と小児白血病の関連に関するオリジナルの研究論文』を、

PubMed、Cochrane Library、Scopusを用いて検索しています(2014年7月および12月に検索)。

さらに、検索で見つかった論文の参考文献、以前の体系的なレビューやメタアナリシスの参考文献も検索しており、

論文が発表された時点で、世に出ている知見をなるべく網羅できるように設計されていることが分かります。

 

論文の選別方法

前述の方法で、2000を超える論文をいったん集めるわけですが、そこからメタアナリシスに含める論文を選別する作業が行われます。

論文の選別のために、いくつかの条件が設定されています。

研究デザインがケースコントロール研究(=症例対照研究)であること

曝露要因として母乳育児が、アウトカムとして白血病が設定されている論文であること

母乳育児期間に関するデータが月単位で含まれていること

全文が英語で入手可能で、査読がある雑誌に掲載されていること

 

2318件の論文を2人の研究者が別々に評価し、吟味して、メタアナリシスに含めるかどうするかを決めました。

その結果、17本の論文が条件を満たしメタアナリシスにかけられました。

 

データ抽出および合成

最終的に残った17個の研究の間に、出版バイアスや異質性は検出されなかった。

包括基準を満たした各研究の質は、ニューカッスル・オタワ尺度を用いて評価した。

StatsDirect統計プログラムの生データに対するランダム効果モデルを用いて、複数のメタ分析を行った。

メタアナリシスの『質』は、メタアナリシスに含まれた論文の『質』で決まります。

選別に残った17本の論文の『質』が大丈夫かということが、大事です。

そこで、各論文の質を、ニューカッスル・オタワ尺度というものを用いて評価しています。

これは、論文の質を9点満点で評価するもので、

ケース・コントロールの定義が問題ないか、比較が可能な研究デザインになっているか、暴露の確認つまり白血病になったという確認が適切にされているか・・・などの9個の項目で、是か非かを判別し点数をつけるというものです。

詳細は省きますが、17本の論文の平均は7.23でした。

 

結果-Results

17本全ての研究のメタアナリシスでは、合計9650人の白血病症例と16526人の対照症例のデータが含まれています。

まさに、ビッグデータです。

 

17本全ての研究のメタアナリシスでは、

母乳育児がない、またはより短期間の母乳育児と比較して、6か月以上の母乳育児は小児白血病のリスクが20%低いことが示された。

オッズ比 0.80; 95%信頼区間 (0.72-0.90)

15件の別のメタアナリシスでは、

母乳育児がない児と比較して、母乳育児をしている児は、小児期白血病のリスクが11%低いことが示された。

オッズ比 0.89; 95%信頼区間 (0.84-0.94)

6か月以上母乳育児を行うことで、小児期白血病のリスクをかなり減らせるということ、そして

母乳栄養をするだけでも、白血病のリスクが下がるということが示されたわけです。

 

18の研究のサブグループのすべてのメタアナリシスは、同様の関連性を示した。

サブグループ解析として、色々なパターンでメタアナリシスが行われていました。

1歳以上で診断された小児のみを含む研究7本でのメタアナリシス

質が高いと思われるニューカッスル・オタワ尺度が8点以上の研究8本でのメタアナリシス

先進国で行われた研究12本でのメタアナリシス

大規模な4本の研究のみでのメタアナリシス

⇒これらすべてで、母乳育児で小児期白血病のリスクが有意に減少するという結果でした。

 

そしてこれは言及しておかねばいけませんが、一つだけ有意な差がでなかったメタアナリシスがあります。

白血病には大きなカテゴリーとして『急性リンパ球性白血病』か『急性骨髄性白血病』がありますが、別々に分けて母乳育児との関連性をみたメタアナリシスにおいて、急性骨髄性白血病と母乳育児との関連性については有意な差がでませんでした。

6か月以上の母乳育児と急性骨髄性白血病リスクの関連は認められなかった。

⇒オッズ比 0.74; 95%信頼区間 (0.48-1.14)

 

 

これら諸々をまとめると、6か月以上の母乳育児によって小児白血病症例の14%〜19%が6ヶ月以上の母乳育児によって予防される可能性があるという結果になります。

 

結論-Conclusions

著者らはこのように論文を結んでいます。

母乳育児は、アクセスしやすく安価な公衆衛生対策といえる。

このメタアナリシスでは、以前メタアナリシスに含まれた研究を含んでいないが(選択基準を満たさないものがあったため)、

母乳育児は小児白血病の発生率を低下させることができ、その他の子どもや母親の健康への便益を高めることができるということを示した。

母乳育児で小児白血病のリスクが14~20%も減少するというのは脅威の結果ですよね。

 

そして、『なぜ母乳が白血病の発症に防御的に働くのか』という疑問についてですが、論文中では2点その理由となる説が書かれていました。

引用しておきます。

母乳栄養児は、人工栄養児よりも、より成熟した免疫系を示唆するナチュラルキラー細胞の量が多かった。

 

母乳に多系統特性を有する幹細胞が含まれていることが発見された。母乳育児を受けている児は、毎日数千から数百万の細胞を摂取している。霊長類モデルを含む動物研究に基づくと、幹細胞は幼児の消化管で生存しその後血流に乗って様々な臓器に移動し、能動免疫を提供すると仮定されている。

 

論文の限界-Limitation

著者らは論文の限界点についてもいくつか言及しています。

提示された限界点の中で、今回は、メタアナリシスに用いた論文をケース・コントロール研究の論文に絞っている点について説明しておこうと思います。

ケース・コントロール研究というのは、例えばこんな研究です。

白血病のこどもを100人(=これがケース)、そのこどもたちと似ているけど白血病ではないこどもを100人(=コントロール)集めてきます。ケースとコントロールにおいて、過去、その子供たちが母乳育児を受けていたかどうか(要因のあるなし)を調べます。

そして、ケースとコントロールにおいて要因のあるなしに偏りがあるかどうかを調べます。

これは現在から過去を見て研究するので、後ろ向きの研究というカテゴリーに入ります。

 

一方、因果関係を調べる上で、一番理想的な研究デザインは、ランダム化比較試験(Randomized controlled trial:RCT)と言われています。

ランダム化比較試験とは、例えばこんな研究です。

生まれたお子さんをランダムに母乳育児をする群と、母乳育児をしない群に分ける。

その後お子さんを5年10年と経過を追い、両群で白血病を発症する割合を調べて比べる。

これは現在から未来へ研究を進める研究ですから、前向きの研究というカテゴリーに入ります。

ただ、母乳栄養はWHOでもしっかりとした推奨が出ています。

「乳児は最適な成長、発達および健康を達成するために、生後6ヶ月間母乳養育をすべきである」

このような世界的なコンセンサスがあるなかで、母乳育児をしない群にこどもを割り振るということは、非人道的な行為になってしまいます。母乳育児をしない群に割り振られてしまうと、明らかに不利益があるわけですから。

そのような理由で、今回の母乳栄養と白血病リスクの関係性を調べるという目的の場合、ランダム化比較試験は選択できません。

ケースコントロール研究にせざるを得ないということです。

 

まとめ-論文を読んで

もう一度結論を転記しておきます。

注意ポイント

メタアナリシスの結果に基づくと、6か月以上の母乳育児によって、小児白血病症例の14%〜19%が予防される可能性がある。

母乳栄養と白血病リスクの関係性を調べるという目的の場合、ケースコントロール研究しかできないため、

メタアナリシスもケースコントロール研究のみになってしまうという限界点はあれども、結論はかなりインパクトがあります。

冒頭でもお話した通り、僕は母乳至上主義ではないのですが、これからは少しでも母乳が出ているお母さんならば

せめて半年、そしてできることなら人工乳を併用してでも、長く母乳を飲ませるように指導していきたいと感じました。

 

-こんな症状、あなたならどうする?

Copyright© 小児科医の子育て相談室 , 2019 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.