こんな症状、あなたならどうする?

乗り物に酔いやすい子供の特徴は?その仕組みも解説!

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こんにちは、Dr.アシュアです。旅行などで遠出した時、お子さんが車に酔って嘔吐してしまうこと、たくさんのお母さん・お父さんが経験している事なのではないでしょうか。一度酔って気分が悪くなってしまうと旅行も残念な感じになってしまう…僕も経験があります。

今回は、子どもの乗り物酔いについてお話したいと思います。旅行のシーズンになると外来でも時々聞かれる質問だったりして、いくつかノウハウもあるのでまとめておきたいと思います。

まずは、乗り物酔いとは何か、どういう理由で起こるのかなど、基本的なことを書いていこうと思います。

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乗り物酔いとは何か?

乗り物酔いとは、実際の体の動きや動きに対する知覚(体が動いているなと感じること)に対して色々な不快な症状が出現する症候群です。

医学用語では「動揺病」といったり「motion sickness」といったりします。

 

出てくる症状は…

あくび、悪心、嘔吐、めまい、頭重感、冷感、便意、顔面蒼白、胃部不快感

と言った胃腸、中枢神経系、自律神経症状を含む症状が出現します。辛いですね。

 

いわゆる乗り物酔いは、車・電車・飛行機・船といった乗り物で酔うものですが、他にもゲームで酔ったり、たくさんの人が動いているのを見ていると酔ってしまうお子さんもいると思います。

実は、これらもメカニズムは乗り物酔いとよく似ており、動揺病というカテゴリーに属するものです。

 

動揺病(乗り物酔い)は、ほぼ全ての正常な人間で起こるものなので、生理的なめまいの一種と考えられています。ある人は簡単に乗り物酔いになるが、ある人は全然起こさないといった、人によって乗り物酔いの起こりやすさが違うことも一般的な事実です。

 

ちょっと脱線しますが、はじめて乗り物酔いについて記述した人物は、ヒポクラテスだと言われています。古代ギリシャの時代から乗り物酔いに困っていた人はたくさんいたようですね。

 

・どうして乗り物酔いになるのか

我々は、普段体を動かしている時、『体を動かせ!』という脳からの命令を出して体を動かしているわけですが、同時に『指令通り体が今ここにあるよ!』というフィードバックを脳に返しています。

仕事を振り分けた上司に、部下が進捗状況を報告するようなイメージです。

この部下に当たるところが、耳にある迷路、視覚情報、体の感覚(体性感覚と言います)です。

 

体の活発な動きがない場合に、動きの推定は、主にこれら耳にある迷路、視覚情報、体の感覚(体性感覚と言います)に基づいています。

これらの三つの感覚の手がかりが一致していない場合に、感覚的な葛藤が脳に起こります。

この葛藤が動揺病の原因であると仮定されています。

Can J Physiol Pharmacol. 1990 Feb;68(2):294-303.

J Vestib Res. 2004;14(4):335-46.

Aviat Space Environ Med. 2006 Dec;77(12):1213-23.

 

一般的な乗り物酔いはどうでしょうか

運転手さんがいて、自分は座席に座っていますよね。体は自分では動いていないけど、動かされている状態です。

このとき、上司である脳は、体を動かせという命令を送っていないわけですが、部下の中では大変な混乱が起こります。

耳にある迷路は、加速度や重力を感じる所なので、『命令はないかもしれませんが、今体は動いてますよ!』と訴えます。

視覚情報は、『何言ってるんですか!体は動いてませんよ!』と訴えます。

 

この情報の混乱が乗り物酔いを誘発します。

 

乗り物ではない動揺病を起こすシチュエーションはどうでしょうか

これには、VRゲームやVR乗り物、人の視点が主に出てくる映画などが含まれます。

VRゲームは分かりやすくいえば、マインクラフトの1人称モードですかね。人間の視点が主に出てくる映画はちょっと古いですけど、ブレア・ウイッチ・プロジェクトが良い例になるでしょう。

もちろん自分は座っているし、実際に動いてもいません。逆に画面が動いています。

このとき、上司である脳は、体を動かせと言う命令を送っていないわけですが、乗り物酔いと同じように部下の中では混乱が生じています。

耳にある迷路は、『命令はないし、体も動いてませーん!』と言っています。

視覚情報はめまぐるしく視点が変わっているので、『命令はないかもしれませんが、今体は動いていますよ!』と訴えます。

ここでも情報の混乱が生じていて、動揺病を誘発します。

 

医学生あるあるでもこの種の動揺病は良く経験されます。顕微鏡の実習の時に複数の人間で同時に同じ顕微鏡のスライドを見ることがあるのですが、自分の見ている視点を教授が移動させるんですよね。その際同じことが生じるので、酔ってしまうんですね。僕もこれには悩まされました。

 

どの位の割合の人が乗り物酔いになるの?

面白い研究があったのでご紹介しておきます。

海上での航海114件(船6隻、ホバークラフト1隻、ジェットフォイル1隻)で20,029人の乗客を対象とした調査

⇒21%が「やや不快」、4%が「かなり辛い」、4%が「恐ろしい」と感じ、 7%が「嘔吐」を経験した

Aviat Space Environ Med. 1988 May;59(5):399-406.

56回のバス移動で3256人の乗客を対象とした調査では、

28%が「気分悪化」、13%が「吐き気」、2%が「嘔吐」を経験した。

Ergonomics. 1999 Mar;42(3):444-61.

民間航空機38便で923人の乗客を対象とした調査では、

16%が「気分悪化」、8%が「吐き気」、0.5%が「嘔吐」を経験した。

Aviat Space Environ Med. 2000 Dec;71(12):1181-9.

 

これらは、成人の検討ですが、子どもの検討ではこんなものもあります。

千葉県香取市内の5か所の中学校の生徒、計1005名(男子524人、女子481人)のアンケート調査では、

乗り物酔いを起こしやすいと答えた生徒は、全体では19.2%の193人、男子では16.2%で85名、女子では22.5%で108人であった。

浅野 尚 :中学生の乗り物酔いの訴えについて 第40回全国学校保健・学校医大会 2009; 272-276

 

乗り物酔いのリスクファクターは何か?

酔いやすい人の特徴については、様々な研究がなされているようです。

どんな人が乗り物酔いになりやすいか

性別:女性は男性よりも運動酔いの影響を受けやすい

Lancet. 1997 Sep 20;350(9081):892.

 

年齢:2歳未満の子供は、乗り物酔いになりにくい。乗り物酔いの発生率は約9歳でピークに達し、その後成人期に減少する。

Handb Clin Neurol. 2016;137:371-90.

⇒年少児が乗り物酔いに強い理由としては、乗り物酔いが平衡感覚が発達してくると起こりやすくなってくるからです。

 

遺伝的要因:遺伝的変異は、乗り物酔いに対する感受性の増加と関連している。 80,494人のゲノムワイドの研究では、運動酔いに関連した35の一塩基多型(SNP)が見つかった。

Hum Mol Genet. 2015 May 1;24(9):2700-8.

⇒簡単に言えば、親が酔いやすければ、こどもも酔いやすいという事ですね。

 

片頭痛:片頭痛患者の50%が動揺病を持っているという報告がある。

Brain. 1984 Dec;107 ( Pt 4):1123-42.

 

ホルモン要因:妊娠している女性は、特に乗り物酔いになりやすい。乗り物酔いのなりやすさは、月経周期や経口避妊薬の使用によっても影響を受ける可能性がある。

Postgrad Med. 1999 Oct 1;106(4):177-84.

Brain Res Bull. 1998 Nov 15;47(5):433-6.

 

気持ちの効果:海軍訓練生を対象に、船酔いをする可能性が低いと声をかけられたグループの方が、実際に船酔いのリスクが減少するとした研究結果がある。

J Appl Psychol. 1995 Oct;80(5):628-35.

⇒乗り物酔いのリスクは、酔ってしまうかも…という個人の感情に影響を受けるということですね。

 

どんな環境だと乗り物酔いになりやすいか

運動のタイプ:ゆっくりした運動は、動揺病(乗り物酔い)を誘発しやすい。

航空旅行者の研究では、低周波の横方向および縦方向の動きの大きさは、動揺病の発症と関連していました。

Aviat Space Environ Med. 2000 Dec;71(12):1181-9.

 

身体の位置:船では、仰向けに横たわっていることで、船酔いになりにくくできるかもしれない

J Travel Med. 2000 May-Jun;7(3):120-4.

 

まとめ

今回は、動揺病(乗り物酔い)について、基本的な情報から、リスクファクターについて、色々な研究の結果をご紹介しました。

簡単にまとめると、女性で小学校中学年くらいが一番乗り物酔いを起こしやすい時期だ、ということだと言えますね。

さらに親も乗り物酔いを起こしやすい場合は、より注意したほうが良さそうです。

 

以上となります。参考になれば幸いです。

次の投稿で、乗り物酔い・動揺病に対する対策方法をお伝えしていきたいと思いますので、興味のある方は少しお待ちくださいね。よろしくお願いいたします。

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