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こどもが水に溺れる溺水、一番起こりやすいのは実は自宅のお風呂!!

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こんにちは、Dr.アシュアです。今回は水に溺れる⇒医学用語でいうところの溺水(できすい)にスポットを当ててみたいと思います。

溺水は本当に怖い事故で、一瞬の事故で今まで元気だった子どもが生死の境を彷徨うことになり、両親も突然の出来事に半狂乱になります。

運よく助かって後遺症なく退院できるお子さんも多いですが、発達障害になるお子さんや、意思疎通がとれなくなり四肢は動かなくなり経管チューブからの栄養で生活していかなくてはいけないお子さん、最悪のケースだと救急外来で亡くなってしまうこともあります。

最悪の症例も経験したことがありますが、救急外来でのあの両親の阿鼻叫喚の様子は、経験を重ねても決して慣れるようなものではありません。

溺水は、絶対に起こしてほしくない事故の一つです。

今回は水に溺れる=溺水の正しい知識を一緒に学ぶとともに、溺水を起こさないための心得を心に刻み込みましょう!!

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水に溺れることの怖さ

こどもが溺れた場合、分単位で脳のダメージが生じてくると言われています。時間にして10分以上溺れて水中にいたとすると予後が悪い、つまり言い換えれば、脳機能の行く末が悪いというのが定説です。

『脳機能の行く末が悪い』というのは、今まで出来ていたことが出来なくなったり、発達に障害が出てくるリスクが上がったり、最悪の場合には脳機能の停止=脳死や死亡ということも含めます。

さらに、水中にいた時間が25分を超えるともっと状況は悪く、ほぼ全例のこどもが死亡します。冷水であっても水中にいた時間が1時間を超えると脳機能回復は望めません。

例えば、テレビアニメ1本分見ている間、我が子の溺水に気付けなければ、もう我が子の未来が失われると言うとわかりやすいかもしれません。、、、これは、背筋が凍りますよね。

冬に野外で起こった溺水の場合、体がとても冷えて低体温になることがあります。その場合は脳が消費するエネルギーが抑えられており、溺水の状況が悲惨でも、意外に脳機能の回復が良く症例によっては事故前の状態に近いところまで戻ることもあります。また直腸の体温=直腸温が32度まで上昇するまで決して死亡したと言えないため、我々医師たちは必死に体温を上げる治療を行うことになります。

 

こどもの死亡原因に占める溺水の割合

0歳~19歳の死亡原因の第5位までに『不慮の事故』がランクイン

平成27年度の厚生労働省の人口動態統計からの抜粋

『不慮の事故』の詳しい内訳はここでは紹介を省きますが、水に溺れた=溺水はこの『不慮の事故』の中に含まれています。さらに、ちょっと古いですが平成20年度の厚生労働省の人口動態統計から抜粋してみると、

0-4歳、5-9歳、10-14歳において溺水は、交通事故、窒息とともに『不慮の事故』の中の3台原因と言えます。0-4歳においては不慮の事故の17%を溺水が占めています。

平成20年度の厚生労働省の人口動態統計からの抜粋

このように厚生労働省から一般向けにプレスリリースされている情報を解釈してみると、こどもの死亡原因において溺水は大きな割合を占めている、とても危険な事故であることがわかりますね

 

こどもが溺れる場所で一番多いのは自宅のお風呂

2歳未満の溺水の80%が実は自宅のお風呂での事故であるとのデータがあります。

2歳以降になると活動性が増えることで、屋外、プール、川・池・海も同レベルに増えてきます。プールや川・海といった泳ぎに行く場所ならば、確かに溺れるリスクもあるだろうと思いますが、2歳未満はよりにもよって自宅のお風呂が一番多いんですね。なんだか、自宅のお風呂が急に怖くなってきました。

次に浴槽での溺水の状況を見ていきましょう。

こども1人でお風呂に入れてたんじゃないの??と私なんかは想像するわけなのですが、実はそれだけではないようです。

浴槽での溺水の状況

・親が気付いた時には水に沈んでいた、浮いていた

・親が目を離したすきに風呂場に行った

・風呂場で遊んでいて転落

・両親と入浴中

・1人で入浴していた

・けいれんが起きた影響で沈んだ

・兄姉と入浴中

日本医事新報 No. 3553(平成4,5.30日)より抜粋

浴槽に本人以外の人がいる状態で事故が起こることが結構多いですよね、、。

こどもが溺れていることに他の人間は気付けないということなのです。

これは救急をやっている医師であれば知っているのですが、人が水に溺れるときは『思ったよりも音がしない』ことに起因します。

以前、僕が旅行で川遊びに行ったときに大人の男の人が溺れるところをみたことがありますが、その男の人は漫画で見るような『溺れるー!!たすけてー!!』と叫ぶことはありませんでした。

『あれ?なんだかあの人水の中でバタバタしていて、変な動きをしてるなぁ』と橋の上から僕が気にしてみていたら、突然、その男の人が近くの女の人をつかんで水の中に引き入れようとしているように見えました。男の人は変わらず、声を出したりはせず水から顔を出したり引っ込めたりしながらバタバタしていました・・・。

『ふざけるにしてもセクハラまがいな事やって見苦しいなぁ』とはじめは思っていましたが、男の人の必死な様子と女の人の妙な様子から『・・・・、アレ???もしかしてあの男の人、溺れてる!!!?とハッと気づき、すぐに周りの人にも伝えた結果、事なきを得たことがありました。

繰り返しますが、溺れる人はそれほど音をたてずに溺れます

ですから、子どもと一緒に入浴していてすぐ近くにいても、少し目を離した隙に水に溺れる、そういうことが現実に起こるわけです。

 

こどもを浴槽での溺水から守るために具体的にできること

文献からの引用に私見を加えてお話しすると

・こどもが2歳になるまでは、残し湯(お風呂後にお湯をためておく)の習慣をなくしましょう

・こどもがいたずらに浴室に入れないような工夫をしましょう(鍵を閉めるなど)

・こどもだけで湯加減をみることをさせないようにしましょう

こんなことを注意するとよいのではないでしょうか。

また、発達の遅れやてんかん(熱が無くても痙攣しやすい疾患)を持つお子さんの場合は特に注意して入浴することが必要です。一緒に入らない場合はこどもが入浴しているときに定期的に声をかけたり、お湯を流している音に気を配りましょう。

溺水でこどもを亡くしたご家族、こどもに重大な後遺症が残ったご家族を見るのは、本当に心が痛みます。しかも普段よく使っていた浴槽が事故の現場となれば、ご家族は自宅のお風呂さえ使えなくなってしまうケースもあります。気をつければ予防できる事故が溺水ですので、以上のことを是非参考にして頂きたいと思います。

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