漫画「プラタナスの実」考察・解説

「プラタナスの実」第三・四話を小児科医が解説! ターニケット症候群とは?

こんにちは、Dr.アシュアです。

今回は10/5に発売された週刊スピリッツから新しく連載が開始されたマンガ「プラタナスの実」の第三・四話を、現役小児科医が考察・解説してみたいと思います。

「プラタナスの実」はドラマ化もされ人気を博した「テセウスの船」の原作者、東元俊哉先生の新連載の漫画で、小児科医療をテーマとして描かれる漫画です。

漫画の情報については公式HPをご覧ください。

東元俊哉「プラタナスの実~小児科医療チャンネル~」

東元先生にも企画について許可頂いており「プラタナスの実 考察・解説ブログ~非公式だけど公認~」ということで、毎週がんばって考察・解説していきます。

今回は第三話が病気のお話がなかったので、三話・四話をまとめて投稿させて頂くこととしました。

 

やはり、私の予想通り舞台は北海道へ!北海道の北広島市を中心に今後お話が進んでいきそうですね。主人公の鈴懸真心先生と父親の関係が壊れた原因についても今後語られていきそうです。今回のお話についてや、今後の展開の予想に加えて、真心先生がみつけた「ターニケット症候群」についても少し解説していこうと思います。

 

主人公「鈴懸真心」先生の父親の職業「小児外科」とは?

前回の投稿で、主人公鈴懸真心先生のお父さんは「小児科医」と予測していましたが、違いましたね~「小児外科医」でした。

小児外科医は、子どもの外科疾患を担当する外科医です。全ての手術を要する疾患をカバーするわけではなくて、心臓の手術や頭蓋内の手術や骨の手術などは一般的にはカバーしません。主にお腹の病気や、外陰部・肛門の病気をカバーする外科医です。

実は小児外科医の先生がいる病院・いない病院で、小児科医の負担は結構異なります。

小児科医の所にくる患者さんは、当たり前ですが自分で手術が必要な病気かどうかを言ってくれるわけではありません。小児外科医の先生がいない病院で、手術が必要な病気を見つけてしまったら…場合によっては救急車で外科医のいる病院まで連れて行かねばなりません。

精巣捻転(せいそうねんてん)という病気があります。精巣が陰嚢の中で捻じれて血流障害を起こす病気では6時間以内に手術にこぎつけないと精巣が血流障害でダメになってしまうという病気で、小児外科医がいないと治せません。こういう時間が待てない病気の患者さんを見つけて、自分の病院に小児外科医が居なかったら…自分なら相当焦ってしまいますね。。。

私が働いている病院では、小児科医も小児外科医も結構沢山いて、カンファレンスも開きお互いに苦手な部分を上手くカバーしつつどんな病気のお子さんにも迅速に対応できるようにしています。

色々なスペシャリストが上手く連携して医療に当たる、、これって中々難しいことだったりします。

 

主人公「鈴懸真心」先生と父親との確執について

2~4話の中でだんだんと真心先生の父親の背景が分かってきました。

どうやら、真心先生の中での昔の父親像と、今の父親像がずいぶんギャップがあって、真心先生自身とても困惑している様子が見て取れます。

まとめてみると

昔の父親の様子

・昔は大病院の院長で、採算の悪い科の医師を解雇するなど、経営>医療という立場の人間だった

・自分の子ども達に対しても、テストの点数だけをみて厳しく叱責するなど、高圧的な人物だった

 

今の父親の様子

・大病院の院長をやめた後、アメリカでチャイルド・ライフ・スペシャリストの勉強をして帰国

・子どもに寄り添うようなステキな小児科を中心とした小児医療センターを作ろうとしている

・泣き叫ぶ乳児で、問診も診察も難しい状況でも辛抱強く診察している姿

 

・・・別の人間ですか?お父さん。。。

そもそも小児科というのはあんまり採算が取れない科ですし、マンガに出ていた小児科の待合いは、すっごくステキでむちゃくちゃお金がかかっていそうな印象です。しかも、チャイルド・ライフ・スペシャリストを雇うなど、経営の面で言えば、採算全く考えていない、どんとこい赤字的な風体ですよね。

おそらく院長をしていた時代に大きな「事件」があって、父親の考え方が大きく変わったのではないでしょうか。

第三話で少しだけ出ていた場面…「心電図の波形がasystole(心停止)になっており、病室のベッドの上で横になっている誰かの上に折り重なるようにしているある人物の姿」。これがおそらくキーポイントですよね。。

もしかすると、真心先生の母親が何らかの事情で急死してしまい、それに関する出来事が父親と真心先生の確執の根っこになっているのではないでしょうか・・・?

真心先生の母親は、「患者思いの良い小児科医」と記述がありましたよね。テストの点数だけで人を評価しない笑顔がステキなお母さん、真心先生と似ている感じがします。今までのお話では全く現在の母親の絵が出てきていません。それはもしかするとすでに亡くなっているからではないでしょうか?

ちょうど四話の最後あたりで真心先生が父親に疑問を投げかけ始めました。真心先生、父親の間で何があったのか?父親の人柄がこんなに変わってしまったのは何が原因なのか?だんだん明かされてきそうですね。

真心先生は、絶縁していた父親と共に働くためには、二人の確執が解消されることがマストでしょう。今後のお話が気になりますね。

 

第三・四話ででてきた「ターニケット症候群」、乳児の不機嫌は恐ろしい・・・

「乳児の不機嫌」「ミルク飲まない乳児」

このワード、普通の小児科医だったら「あー入院だわ~」って思っても不思議ではありません。

自分の前の投稿にも書きましたが、子どもが元気!というには大事な3点があります。

・食べ飲みしっかりできている

・いつもと同じように動けている

・視線があう=意識がしっかりしている

子どもが元気というのは何か?について、ご興味がある方は過去の投稿をご覧下さい。

CHECK
こどもが元気ってなに?

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乳児の場合、いつもと同じように動けているのは、「好きなおもちゃで遊んだり」「あやしたら笑ったり」とかですよね。

三話・四話で出てきた赤ちゃんは、常に泣きまくっていて、全くおっぱい飲めない状態・・・。これは、いつもと同じように動けていないですし、もしかすると意識障害かもしれません。私なら、原因が分からなければ絶対入院でしょうね。

今回真心先生のまわりに病名が飛び散る「鑑別診断」はなかったですが、、Dr.アシュアが鑑別診断挙げても怖い病気がポンポン出てきます。

髄膜炎、頭蓋内出血、それこそ腸重積、心不全、尿路感染症

怖くない病気もたくさん出てきます。

中耳炎、B燃費、皮膚炎(かゆくて機嫌が悪い)、などなど

 

乳児の場合、なんだか良く分からないけど夕方機嫌が悪くなるコリックという病気というよりは体質がありますが、生後3週~4か月くらいが多く、生後6か月までにはなくなります。いわゆる黄昏泣きというヤツですね。

これは除外診断なのではじめから「だいたいコリックだろ・・・」という構えで診察しに行くのは絶対にダメです。

 

原因が分からなければ、全身裸にして診察!は小児科医としては「基本のき」ですが、真心先生は今回もさすがでしたね。

見事髪の毛が絡まってうっ血を起こす「ターニケット症候群」を見つけることが出来ました。他にも、鼻にとか耳とか、肛門とかに何か異物が入っちゃった(虫とかオモチャとか)というのも、見逃しがちな不機嫌の原因です。穴という穴を確認しろ!というのも小児科医としては「基本のき」ですね。

 

「ターニケット症候群」も怖い病気

今回の赤ちゃんの不機嫌の原因は、母親の髪の毛が足の指に巻き付いて締まってしまう「ヘアターニケット症候群」という病気でした。

漫画の中でも解説されていましたが、

手・足は2歳くらいまでが多く、母親の産後脱毛症が起こる乳児期に特に注意が必要です。少しお兄ちゃん・お姉ちゃんになれば、おかしなことが起これば教えてくれますが、乳児は泣くしかできませんからね。

お母さんと一緒に赤ちゃんがお風呂に入っていると、当然ながらお風呂のお湯にお母さんの髪の毛が抜け落ちることがあります。これが、気が付かないうちに足の指、手の指、場合によっては外性器(おちんちんなど)に付着してしまうことがあります。

髪の毛は濡れているときに伸び、乾燥すると収縮する性質があるため、だんだん締め付けがきつくなり、赤ちゃんの手足の指は、細いなわで首を絞めたような状態になります。

一旦この形が完成すると、締められた先がむくんでくるので、より一層締め付けがきつくなることになります。長期に放置されると、指先・足先の組織が壊死してしまうという恐ろしい結果になってしまいます。

「髪の毛なんてちゃんと見てれば、絶対見逃さないでしょう、親なんだから」という声もあるかもしれませんが、産後間もないお母さんが赤ちゃんを育てていくのは相当な重労働です。母乳だって2時間ごとにあげなきゃいけないですし寝てられませんからね。そんな中でターニケット症候群が起こってしまったとして誰がお母さんを責められるでしょうか。私は責められません。

 

ちなみに、足指のターニケットは、6か月未満の乳児に良く起こり、典型的には髪の毛によるものです。

手指の場合は、顔や目を引っ掻かないように着用するミトンをしているときに、ミトンの中で手が動くことでターニケットが発症したという報告があります。

小児科学会のHPの障害注意速報-Injury Alert-には、おもちゃに指を突っ込んで抜けなくなって起こったターニケット症候群の報告がありました。興味のある方はご覧ください。小児科学会のHPの障害注意速報Injury Alert

治療は真心先生がやったように小さなはさみで愛護的に髪の毛を切除すればよいわけですが、指のむくみがひどいと髪の毛が見えなくなってしまうのではさみでは何ともならないケースもあります。その場合は、髪の毛を溶かすような脱毛剤を塗るという方法もあります。ただし粘膜には使えないので、手・足限定ですね。

-Injury Alertから引用-

これはInjury Alertから抜粋したものですが、ナット型のオモチャに指を突っ込んで、指がうっ血してしまっています。こうなるとなかなか抜けないですよね…。この症例は、ワセリンでなんとかナットが抜けたようですが、全く無理なら工具みたいなもので指を傷つけないように気を付けてナットを破壊するようなことを考えねばなりません。。。怖すぎる。

 

今回は以上となります。

これから「プラタナスの実」、真心先生と父親の確執についての話が進んでいきそうですね。子育て世代のお父さん、お母さんにも是非読んで頂きたいリアルな小児科医の漫画だと思います。次回もとっても楽しみです。

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