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便秘治療をすると背が伸びる?本当でしょうか、その関連性とは?

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小児科には腹痛で受診するお子さんもいますが、腹痛のよくある原因疾患に『便秘』があります。たかが便秘~って思ったかもしれませんが、舐めてはいけません。うんちの様子は健康の指標と古来から言いますが、昨今うんちの健康状態を題材にしたうんコレなんていうアプリもあるくらい(それは冗談ですが)、便通はこどもの健康を語る上でとても大事です。

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私が『便秘』を敵視する理由

それはずばり成長障害に結び付くからです。こどもの身長の増加、体重の増加に関して大事な要素は、成長ホルモン、、、も大事ですが、そもそも成長ホルモンうんぬんかんぬん言う前に、やはり栄養と臓器の健康これが一番だと思います。実は乳児期・幼児期・学童期で成長に重要な要素は異なっているのですが全ての年齢で栄養が大事なのは言うまでもなく、特に乳児期は栄養の要素がとても大きいです。

ではなぜ乳児期の栄養がより重視されるのでしょうか。それは、乳児期の食生活の習慣がその後の食生活の習慣を形成する上で大事な時期だからです。この時期に基本的な食生活ならびに排便習慣が身に付かないと、やはりその悪影響は終生にわたって続くと思われるからです。

実際、私の外来には低身長・低体重のお子さんが他のクリニックから紹介されてきますが、ある程度の割合で栄養に関するつまづきが隠れていて、それを改善して食事摂取量が増えて便通が改善すると体重が増加に転じ、身長の伸びも本人のポテンシャルがしっかり発揮されて改善されることが経験されます。

長々と話をしてきましたが、便通が悪いと栄養摂取が滞る⇒栄養摂取が悪いと身長は伸びない⇒だから便秘は良くない、というわけですね。

 

便秘のメカニズム

まず背景に排便を我慢する理由があることが多いです。

たまたま便が固くなり排便の時に痛くなった、学校に通い始めてストレスが大きいといった良くあることから、情緒障害や抑うつといった心理面の問題がある場合もあります。

そして、長時間便がたまると直腸に常に便がたまっている形が、常態化します。我々の体の作りとして、便が直腸にやってくると直腸の壁が引き延ばされます。そしてその刺激から『便をしたい』という感覚=便意が生じます。直腸に常に便がたまっていると、さらにそれ以上の便がたまらないと便意を感じにくくなります。長く溜まっている便は固くなるので、排便時にさらに苦痛を伴うためまた排便を我慢するというサイクルになります。以降は悪循環でどんどん便意を感じなくなる&直腸に便がたまるのが悪化して便塊が大きくなります。終いにはoverflowといって直腸にたまった巨大な便の周りを漏れ出すように下痢・軟便がまわり、便意がなくても便が漏れるようになってしまいます。

たかが便秘といっても行きつくところまで来てしまうととても可哀そうな状態になってしまいます。本当にそんな人いるの!?と思われるかもしれませんが、実際に小学生高学年くらいのお子さんで、ひどい便秘から便漏れを起こし、本人の抵抗のため便秘治療が上手くいかないため、全身麻酔の上でオペ室で摘便(肛門から用手的に便を描き出す処置です)を行わざるを得なくなった症例も経験したことがあります。

しかし、ここまで来てしまう場合には、背景に発達障害や精神運動発達遅滞が隠れていることも多いと言われています。

 

慢性便秘の定義について

4歳未満では以下のうち2項目以上が1か月以上認める場合を慢性機能性便秘と定義します。

・1週間に2回以下の排便

・週1回以上の便失禁

・過度の便の貯留の既往

・痛みを伴う、あるいは硬い便通の既往

・直腸の大きな便塊の存在

・トイレが詰まるくらいの大きな便の既往

随伴症状:易刺激性、食欲低下、早期満腹感、大きな便の排便後随伴症状が消失する

~小児慢性機能性便秘診療ガイドラインより~

乳児(1歳未満)では排便が週2回以下、あるいは硬くて痛みの伴う排便でかつ診断基準の少なくとも一つがある場合便秘とみなされます。

 

合併症として起こってくるのは、尿路感染症、遺尿・夜尿(やかんのおもらし)、排尿障害です。

ガイドライン上でも便秘に対する治療で改善が見られた例では有意に成長が増加すると書かれています。

 

便秘の疫学、罹患しやすい時期、治療の成功・失敗について

海外では一般人口の0.7-29.6%に存在しているとされており実に様々です。日本の報告では小学生の5.7%が罹患しているとされています。

ただ、発症しやすいのは食事・排泄・生活習慣などが大きく変化する時期で、例えば

・離乳食~幼児食へ食事が移行していく時期

・トイレトレーニング時期

・通学、通園の開始時期

が発症しやすい時期と言われています。

実は便秘自体は治りにくい疾患で、それはおそらく食生活や排便習慣のゆがみから発生してくるので治療しにくいという背景もあると思いますが、成人期への移行例が少なくないようです。また治療に成功しても高率に再発するようです。いずれにしても、早期診断・治療が大事とされています。

 

こういう便秘は危険!早く病院にいこう!

ガイドラインでも最初から薬物治療を併用する、または経験豊富な意思への紹介を考慮すべき徴候として以下が挙げられています

・排便自立後なのに便失禁や漏便を伴う

・便意があるときに足を交差させる(我慢のポーズ)

・排便時の黄門通

・軟便でも排便回数が週に2回以下

・排便時出血

・直腸脱

・レントゲンなどですでに直腸が拡張している

・経過が長く悩んでいる

・すでに病院にかかっているが通常の便秘治療で速やかに改善しない

~小児慢性機能性便秘診療ガイドラインより~

上記の徴候には、一つの考え方・思いが隠されていると思います。それは『困った便秘の場合には、一度は小児外科を受診しよう』ということです。小児外科医は読んで字のごとく、小児の外科疾患を扱う外科医ですが、便秘治療に関しては小児科医よりも専門性が高いと言っても過言ではありません。なぜなら、肛門病変の診療に経験が豊富だからです。頑固な便秘や通常の治療では治らない便秘の場合、腸の病気や肛門の形態的・機能的な病気が背景にある可能性があり、それを含めた診療が可能なのは小児外科医のみと言えるからです。

ただどこの地域にも小児外科医がいるわけではないので、まずは小児科医を受診することで良いと思います。が、困った場合には小児外科医に一度受診してみる、この考え方は重要です。

 

便秘治療の基本

便秘を起こしている形態的な疾患や、背景疾患がある場合はもちろん、そちらの治療が第一になりますが、それらがない場合はまず詰まっている便を出し切る。これが基本になります。

数日~1週間程度は、浣腸や特定の座薬、経口薬を用いて栓になっている便を出します。中学生くらいになってくると浣腸は年齢的にも嫌がりますから経口薬優先になりがちですが、便栓を早期に無くすには、浣腸や特定の座薬による径直腸治療が良いと言われています。

上手くいけば良好な排便が得られるようになるので、維持療法へ移行します。

維持療法の根幹は、まずは生活・排便習慣です

・食事摂取量や水分摂取量を十分に⇒病院で栄養指導を受けるのもいいかもしれません

・規則的な日常生活や食習慣

・トイレを我慢しない

・食後ゆとりのある時間帯にトイレに座る

いわゆる整腸剤といったプロバイオティクスに関しては、ガイドライン的には結論が出ていませんでしたが、食物繊維は1日20g以上の摂取が推奨されています。この20gというのがかなりの量ですので、現実的にはサプリメントや健康食品なども利用するのが楽かもしれませんね。

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