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泣き入りひきつけに効く”鉄剤” 医学的根拠はあるのか?

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こんにちは、Dr.アシュアです。

息止め発作ってご存知ですか?息止め発作は、その名の通り泣いていて突然息を止めて顔色が悪くなる発作です。

“泣き入りひきつけ”という病名の方が分かりやすいかもしれません。健康なお子さんでも5%くらいはこの発作を経験することがあります。

大きく泣いたり、怒ったりしたことをきっかけに息止め発作が起こり、重度な場合は意識を失ったり、けいれんを起こしたりします。

息止め発作は6か月から6歳までの小児で最も一般的で、症例の76%が6か月から18か月の間に発生します(Zubcevic 2000)。

長期治療が必要なてんかんとは異なり、成長で自然と良くなります。3-4歳、遅くとも6歳までには息止め発作が自然に無くなります。

 

しかし、お子さんが重度な"泣き入りひきつけ”になったことがある親御さんは、口をそろえてこう言います。

『そのまま死んじゃうかと思った…』

 

ひどい息止め発作は小児科医が見ていても怖いものです。

ある日の当直のことです。看護師さんの手が空かないので、入院してきた子をすぐに処置できず、アシュアが1人で処置室で見ていたのですが…

 

アシュア『あれ??この子、、呼吸・・、とまってる・・?』

アシュア『あ・・だんだん顔色が悪くなってきた・・!!やばい!ナースコール!!!』『だれかきてー!呼吸止めてる!

酸素酸素!!バギングバギング!!(酸素マスクで強制的に呼吸させる処置のことです)

 

あせったあせった・・・。

 

 

どれくらいの頻度でおこるかというと、前向きコホート研究(DiMario 2001)では、中央値が週に1回の息止め発作でしたが、30%の子供が1日に1回以上発作を起こしたと報告されています。

1日に何度もこんな発作を起こされた日にゃあ、家で様子を見てられませんよね。それで、自然軽快があるにしても治療が必要になるケースもあるわけです。

 

実は、“鉄剤”が息止め発作の治療に役立つことが知られています。そう、貧血の治療に用いる“鉄剤”です。

今回はその“鉄剤”に関するレビューをご紹介しようと思います。

 

さて主役に登場して頂きましょう。

Cochrane Database Syst Rev. 2010 May 12;(5):CD008132. PMID: 20464763

Iron supplementation for breath-holding attacks in children.

Zehetner AA, et al.

 

では見ていきましょう。

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背景と目的-Background and Objective

息止め発作は小児期、特に早期乳児期によく見られます。鉄分補給は、子供の息止め発作の頻度または重症度、あるいはその両方を軽減するとされています。

こういった背景から、著者らは、『小児における息止め発作の頻度と重症度に対する鉄補給の効果を評価すること』を目的にシステマティックレビューを行いました。

 

方法-Method

データベース

CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHL、およびthe metaRegister of Controlled Trialsというデータベースを2009年4月まで検索しています。

含まれている研究のの参考文献も検索対象としています

未発表のデータや研究については、経口鉄サプリメントを製造している製薬会社と何人かの研究の著者らに連絡を取り情報収集をしていたようです。

 

適格基準

下記の研究が今回のレビューに適格な論文とされました。

適格基準はこれ!

・対象が息止め発作を繰り返す(3回以上)18歳未満の小児であること

・鉄補充群とプラセボor無治療群を比較した研究であること

・ランダム化比較試験or準ランダム化比較試験であること

 

データ収集と分析

主な結果は、息止め発作の頻度or重症度のいずれか、もしくは両方の減少でした。

2人の著者が独立して研究を選択しデータを抽出しています。

必要に応じて、研究論文の著者に欠測データについて連絡を取り情報を補完していました。

バイアスのリスクは、ドメインベースの評価を使用して評価されました。

集めた研究の異質性が低い場合は、固定効果メタアナリシスを行い、プールしたオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を計算しました。

 

結果-Results

データベースの検索によって41件の研究が見つけられましたが、選択基準に沿って除外していった結果、最終的に2件の研究(87人の子供)が選択基準を満たしました。

結果を以下に示します。

結果①

2件の研究において、鉄の補給は小児の息止め発作の頻度を有意に減少させた。

(オッズ比 76.48; 95%CI 15.65-373.72, P <0.00001)

結果②

息止め発作の完全な解消を条件として再検討しても、この有意性が維持されていた。

(オッズ比 53.43; 95%CI 6.57-434.57, P = 0.0002)

 

ここで使っているオッズは、あるイベントが起こる確率/起こらない確率 で算出されるものです。

上のメタアナリシスでは、鉄補充群と、対照群(無治療かプラセボ)において、イベントを息止め発作の頻度が減少する(結果①のほう)or完全になくなる(結果②のほう)と定義して、各群でオッズを計算し、その比をとっています。

オッズ比はとても高いので、鉄剤を飲んだ群の方が、かなりの頻度で息止め発作が減ったり無くなったりしていることが分かります。

 

結論-Conclusions

鉄の補給(5 mg / kg /日の元素鉄を16週間投与)は、息止め発作の頻度と重症度を減らすのに役立ちます。

鉄の補給は鉄欠乏性貧血の小児に特に有益であり、反応はヘモグロビン値の改善と相関しています。

貧血ではない小児か、ヘモグロビンのレベルが正常範囲だが低い小児たちにも、役に立つかもしれません。

※ここの元素鉄というのが、実際なんの鉄剤なのかはあまり論文中には記載はありませんでした。

 

なにが分かったか

今回のレビューでは、経口での鉄補充はおおむね問題なく行われ、特に貧血を有する小児では、息止め発作の頻度および重症度が軽減する可能性が明らかになりました。

適格基準を満たした論文が2件しかなかったのは、ちょっと残念ですね。意外にこの領域では堅牢なランダム化比較試験がないのだ、ということも知ることができました。

今回わかったのは、鉄剤の補充は16週間行って息止め発作に有効であったというのは書かれていましたが、

たとえば鉄剤の効果が3カ月目以降も持続するかどうか、また成長して息止め発作がおこらなくなるまで鉄療法を継続すべきかどうかなど、まだまだ分かっていないことはある、と感じました。

今回は以上となります、何かの役に立てば幸いです。

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