こんな症状、あなたならどうする? 雑記

日本脳炎ワクチンいつから打つ?半年から勧められている地域があります

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こんにちはアシュアです。今回は日本脳炎のワクチンについてです。最近診療をしていると、日本脳炎ワクチンをすごーく早く打っているお子さんを見かけます。え?もしかして間違いで早く打った??いえいえ、そこには理由がありました。

 

なんとか脳炎はなぜ怖いか

咽頭炎、気管支炎、蜂窩織炎、皮膚炎などなど『~炎』という病名はたくさんあります。『~炎』というのは体のどこどこに炎症がありますよ!という意味です。病気が発生している場所に、病気の仕組み(=病態と言います)を加えた病名になります。つまり、脳炎は脳に炎症があるということになります。

脳に炎症が起こるという想像をするだけで何が起こるが恐ろしいですよね。熱はもちろんのこと、けいれん、意識障害や、四肢の麻痺…と怖い症状は挙げればきりがありません。しかし、それ以上に怖いのは、中枢神経(脳・脊髄)は再生しないということです。

通常炎症が起こった組織は一時的に壊れますが、病気が治れば組織が再生し、病気の前の状態に回復します。例えば『ニキビが膿んだ後に、皮膚がなくなっちゃった!!』みたいなことはないわけで、多くの場合は正常な皮膚に戻りますよね。ですが、脳・脊髄=中枢神経の細胞は基本的に再生しないというルールがあるので、ダメージを受けて壊れた部分は元通りには回復しません

脳・脊髄は、ものを考えたり、勉強したことを覚えたり、友達と会話したり、四肢を動かしたりという人間の知的活動の中心を担う臓器です。ですから、脳・脊髄にダメージを受けると、そういった知的活動をする能力が失われるだけではなく、さらに失われた機能が元通りに回復しないかもしれませ。

それ故、脳炎は怖い病気と言えます。病気の発症時の症状が後遺症として長く残ったりするだけではなく、知的障害・性格の変化などが起こることもありますし、けいれんを起こす体質である『てんかん』を合併することもあります。

ここまで話を進めてきて、『いやいや、去年家のじいちゃんが脳梗塞になって、はじめは歩けなくなったけど、リハビリで歩けるようになったで!脳みそだって回復するんや!』というようなご意見をお持ちになる方もいるでしょう。たしかに脳梗塞の後遺症で手足の麻痺がある人がリハビリで機能を取り戻すことはよくありますが、あれはダメージを受けた脳が回復したわけではなくて、生き残っている元気な脳が失った機能を肩代わり(機能を代償すると言います)して働いてくれているからなのです。人は脳の機能をすべて使用して生きているわけではないので、代償ができるんですね。

いずれにせよ、脳炎は怖い病気ですから、起こってから治療するのではなく、起こらないように予防したい病気ですよね。予防接種を作って利益があるタイプの感染症とも言えます。

 

日本脳炎の2017年での状況

日本脳炎は、日本脳炎ウイルスにかかったヒトのうち、数百人に1人が発症する急性脳炎です。1960年代は、こどもを中心として年間数千人の患者さんが発生していましたが、1954年に日本脳炎ワクチンが国内で開発され、その後の国の対策もあり、現在患者さんは激減しています。

患者さんが減少した背景には、もちろん前述のワクチンや法律もありますが、生活環境も関係しています。日本脳炎はブタがウイルスに感染し、そのブタの血を吸った蚊が人間の血を吸うことでヒトに感染しますが、ブタを飼う場所が郊外に移り、蚊が発生する田んぼが減ったりする環境の変化も関係して、患者さんが減少してきたと考えられています。

1990年代以降は、関東より西で8-10月を中心に、主に中高年で発生が見られています。ここ数年は年間10例未満でほとんど発生がありませんでしたが、2016年は11例となり近年の中では少し多い発生数でした。

こどもの症例報告数はどうでしょうか。2006年に熊本県で16年ぶりに小児例が報告されてから、年に1-2例ほど報告があり、やはり関東より西に多い印象があります。

 

日本小児科学会の早期接種推奨とは?

2006年以降ちらほらと小児例が報告され、2015年に千葉県で生後10か月の乳児が日本脳炎にかかったという報告も受けて、日本小児科学会から早期接種推奨が提言されています。

 

・ブタの感染率が高く患者発生が見られ感染リスクが高いと思われる地域に住んでいるこども

・海外を含む流行地に渡航する場合

以上いずれかが該当する場合には、標準的な接種年齢である3歳を待たずに早期接種を推奨するというものです。

ではいつから予防接種が可能なのでしょうか。下の図をご覧ください。

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール より引用

こちらは日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール2016年10月1日版です。

 

通常日本脳炎は、3歳になったら打ち始めます。図の通り、3歳のうちに2回、追加接種を4歳になったら1回(この3回をまとめて1期)、9-12歳で1回=2期という形ですね。

そしてここに注目

○で囲んだ部分は、通常の接種推奨年齢より若い『6か月~2歳まで』ですが、『通常日本脳炎を打ち始める年齢ではないけれど、早く打っても定期接種として認めますよ!』という期間になります。定期接種であることは予防接種を受ける上でとっても大事ですが、その辺りが気になる方はこちらもご覧ください。

Hibワクチン、肺炎球菌ワクチンは効果絶大!おたふく風邪のワクチンも早く定期接種にならないかな??

 

日本脳炎ワクチンを早期接種する上での注意点は??

☆3歳未満では打つワクチンの量が半分になります。

ワクチンの効果が十分か、若干不安になりますが、この接種量でも抗体価が十分上がることが第Ⅲ相試験(薬の有効性を確かめる臨床試験です)などでも有効であることが示されているようです。

☆3歳未満で初回を打つと、早めに打った分、2期までに時間が空きます。

こちらも6-10年間隔が空いても抗体価が維持されることが証明されているようです。

 

日本脳炎ウイルスを持っているブタさんが多い地域はどこか

国立感染症研究所が定期的に、県別にブタが日本脳炎ウイルスに罹患しているリスクが高いかどうかを調査しています。記事作成時点での最新情報では以下のようになっています。

ブタの日本脳炎抗体保有状況 -2017年速報第11報- より引用

やはり関東より西にリスクの高い地域が多い印象があります。関東では千葉がリスクの高い地域であることがわかります。千葉県は南北に長く、北は東京に近く都市部も多いですが、南は農地も多く養豚場も多いのだと思われます。

 

まとめ

現在日本脳炎のワクチン接種率は高く、病気にかかってしまうリスクは低いです。しかし、日本脳炎は発症すると大変重症な疾患であり、みんなが予防接種を行うことで流行が防げるわけですから、やはりワクチンはしっかり行うべきだと思います。

まだ3歳にならないお子さんを育てているご家庭では、

住んでいる場所が日本脳炎ウイルスを持っているブタさんが多い地域かどうか
お子さんの今の月齢(早期接種だと、6か月~3歳までに打ち始めることになります)
今の季節(日本脳炎は8-9月に流行します=蚊が飛ぶ時期に重なる)

とを総合的に判断して、早めに日本脳炎ワクチンを接種するかどうかを考えるとよいと思います。

ちょっと複雑な部分もありますから、判断に迷われる場合には、かかりつけの先生に聞いてみるのもいいかもしれませんね。

 

今回の投稿にご質問を頂きました。回答を他の投稿に書いてみたので興味のある方はご覧ください。

日本脳炎ワクチンの初回接種の接種間隔についてご質問を頂きました!

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