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抗菌薬で起こる下痢は、整腸剤で予防できるか?

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こんにちは、Dr.アシュアです。

突然ですが、自分は溶連菌感染症にかかり抗菌薬を内服していた時に、お腹が緩くなり下痢をした経験があります。

皆さんも同じような経験や、お子さんに抗菌薬を飲ませたら下痢をしたという経験はあるのではないでしょうか。

これは、抗菌薬に関連する下痢であり、抗菌薬の副作用の一つです

この抗菌薬に関連する下痢症に対して何ができるでしょうか。そう”整腸剤”を飲むという方法があります。

整腸剤とは、乳酸菌などを含む製剤で腸内細菌の環境を整える作用をもつ薬です。

もともとヒトの腸内には細菌が住んでいるのが普通で、これを腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と言います。この腸内細菌叢は、腸内環境を良い状態にするためにとても大事な役割を持っています。

抗菌薬を内服することで、腸内に住む細菌が一部分死んでしまうことで、腸内細菌叢が崩れて下痢が起こります。

乳酸菌などを含む整腸剤を飲むことでこの腸内細菌叢を正常な状態に近づけようというのは、とてもまっとうな治療のように感じますね。

実際には、おとなの領域でもよくやる手段ですが、抗菌薬と一緒に整腸剤を処方して一緒に飲ませるという手法をとります。

今回は、この”抗菌薬と一緒に整腸剤を飲むことが果たして科学的に本当に有効なのか”を検証した論文をご紹介したいと思います。

さて、主役に登場してもらいましょう。

Cochrane Database Syst Rev. 2015 Dec 22;(12):CD004827. PMID: 26695080

Probiotics for the prevention of pediatric antibiotic-associated diarrhea.

Goldenberg JZ, et al.

 

今回もコクランレビューという有名な雑誌からのシステマティックレビューです。

さあ、見ていきましょう。

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背景と目的-Background and Objective

抗菌薬はお子さんによく処方されるタイプの薬剤です。

抗菌薬は、胃腸内の微生物バランスを変化させ、抗菌薬に関連する下痢を引き起こします。

整腸剤は、胃腸内の微生物のバランスを回復させることで、抗菌薬に関連する下痢を予防する可能性があります。

 

こういった背景から、著者らは、『小児における抗菌薬に関連する下痢の予防に使用される整腸剤の有効性と安全性を評価すること』を目的として研究を行いました。

 

方法-Method

検索方法

MEDLINE、EMBASE、CENTRAL、CINAHL、AMED、およびWeb of Scienceが特殊な検索システムを用いて検索されました。

検索期間はそれぞれのデータベースの開始から2014年11月まででした。

検索システムとしては、Cochrane IBD / FBDレビューグループ、CISCOM、NHSエビデンス、IBIDSを含んでいました。

検索で出てきた論文の著者らや、栄養補助食品・製薬会社、その領域のエキスパートに、進行中あるいは未発表の研究がないか問い合わせるために手紙を送り、情報を収集しています。また、会議の議事録、論文要旨、および検索ででてきた論文の参考文献についても検索し、情報収集されていました。

 

選択基準

以下の基準を満たした論文が選ばれました。

論文の選択基準はこれ!

・ランダム化比較試験であること

・対象者が0-18歳の小児であること

・抗菌薬を投与されていて、整腸剤投与群と、プラセボ群 or 他の予防治療群 or 無治療群とを比較している論文であること

・抗菌薬の使用に引き続く下痢の発生率を測定している論文であること

 

データ収集と分析

研究の選択、データ抽出、およびバイアスのリスクなどの論文の方法論的な質の評価について、2人の著者が独立して行いました。

二値データ(下痢の発生率)をプールされたリスク比(RR)またはリスク差(RD)で表し、ならびに連続データ(平均下痢期間、平均1日便頻度)は平均差(MD)を用いて表しました。それぞれに対して95%信頼区間(95%CI)も示しました。

下痢の発生率に関するプールされた結果については感度分析が行われました。

異質性について検証を行うために、整腸剤株、用量、抗菌薬に関連する下痢の定義、およびバイアスのリスクについてサブグループ分析が行われました。また、患者の診断、単系統株と多系統株、業界の後援、入院患者の状態による事後サブグループ分析も実施しました。

エビデンスの全体的な質は、GRADE基準を用いて評価されました。

 

結果-Results

23件の研究(3938人の参加者)が選択基準を満たしました。

研究に用いられていた整腸剤は、バチルス種、ビフィドバクテリウム種、クロストリジウムブチラム、ラクトバチルス種、ラクトコッカス種、ロイコノストッククレモリス、サッカロミセス種、またはストレプトコッカス種のいずれか単独または混合が使用されていました。

 

バイアスのリスクは、13件の研究では高いか不明であり、10件の研究では低いと判断されました。

23件の研究のうち22件の研究では、積極的代替治療、プラセボまたは無治療対照と比較して、整腸剤群において抗菌薬に関連する下痢の発生率について利益があったと報告されていました

メタアナリシスによる結果は以下の通りです。

整腸剤群における抗菌薬に関連する下痢症の発生率

整腸剤群は8%(163/1992)、対照群においては19%(364/1906)

(RR 0.46、95%CI: 0.35-0.61; I2= 55%、3898人の参加者)

GRADE分析では、この結果に対するエビデンスの質は中程度であることが示されました。

この有益性は、感度分析を用いて極端な状況で検討してみても統計学的に有意なままでした。

 

有害事象について報告した16件の試験(n = 2455)のいずれにおいても、整腸剤による重大な有害事象は認められませんでした。

有害事象の大部分はプラセボ群、標準治療群、または無治療群で報告されたもので、発疹、吐き気、ガス、鼓腸、腹部膨満感、腹痛、嘔吐、痰の増加、胸痛、便秘、味覚障害、食欲不振などがありました。

 

結論-Conclusions

今回のメタアナリシスでの結果は、中等度の質であると結論付けられました。

プールされたリスク比は、RR 0.46; 95%CI: 0.35-0.61でした。

さらにリスク差 RDから求められたNNTは10でした。

つまり、10人治療すれば、1人は抗菌薬に関連する下痢を起こさずに済むということです。

評価された様々な整腸剤の中で、1日当たり5〜400億コロニー形成単位のLactobacillus rhamnosusまたはSaccharomyces boulardiiが、適度なNNTをもち、有害事象が非常にまれであり、抗菌薬に関連する下痢症の治療に適切かもしれません。

しかし、他の整腸剤剤の有効性と安全性について結論を出すのは時期尚早です。

健康な子供たちには重大な有害事象は観察されませんでしたが、中心静脈カテーテルの使用および細菌/真菌のトランスロケーションに関連する障害を含む潜在的な危険因子を伴う深刻な衰弱または免疫障害の子供たちには深刻な有害事象が観察されました。

さらなる研究が行われるまで、有害事象の危険性がある小児集団では整腸剤の使用は避けるべきです。

 

なにが分かったか

コクランレビューのシステマティックレビューをご紹介しました。いかがでしょうか。

今回のレビューでは、リスク比だけではなく、リスク差についても記載され評価されていました。

これはとても好ましいことで、臨床的に分かりやすいのはリスク差であり、そこから計算されるNNTなのです。

NNTは、Number Needed to Treatの略で、何人治療すれば1人救えるか、という指標です。

NNTが100なら…100人に整腸剤を処方しないと1人下痢から救えない、ということなので、僕なら処方しません。

今回はこの値が10でした。10人に整腸剤を処方すれば1人下痢から救えるなら処方しようか、という気持ちになるかもしれません。

 

整腸剤自体は”良いことはしても悪いことはしない薬”と自分は考えていましたが、整腸剤はそもそも腸内細菌の環境を整える”菌”ということは、自分も再確認しました。

もともとの病気で先天的に免疫に大きな問題があるお子さんには、整腸剤の菌すら害になるということはとても大事なことですね。

 

今回は以上となります。何かの役に立てば幸いです。

 

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