こんな症状、あなたならどうする?

こどもが初めて痙攣しました!という話を医者は信じません その①

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こんにちはDr.アシュアです。今回は病院のカンファレンスで出てきた話題をもとに記事を書いてみることにしました。

いわゆる「こどもがはじめてけいれんしました!」と言って親がこどもを連れて病院を受診するとき、実は医者はまず親を信じません。

誤解のないように言いなおせば、親は「初めてけいれんをみた」ということですから、けいれんを起こす病気はなにかと診療を進めていくその前に、『そもそもそれって本当にけいれんですか?』という議論が間に入るわけです。もちろん何度か熱性けいれんを経験しているご両親がいうことを僕は毎回疑ったりしません。

まず本当にけいれんか?そうではないか=つまりけいれんに見えるような他の病気じゃないかということを区別する必要があるんですね。

ということで今回は、いわゆるよくあるけいれん(ここでは熱性けいれんやてんかんで言う所の全般性痙攣と定義しておきます)と、けいれんに間違われる疾患の区別のポイントを挙げていきたいと思います。

以前熱性けいれんのところにも書きましたが、けいれんは病院に来た時には止まっていることが多いため、医者は「ご両親が観察して医者に伝えてくれた言葉」だけで、けいれんが真のけいれんか否かを判断しなければいけないわけです。

ご興味のある方はこちらもどうぞ⇒こどもが痙攣!その時親はどうする??

今回の記事が、お母さん・お父さんがいざという時にどんなところに注意して観察すべきか整理する助けになればと思います。

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お家で確認できる真のけいれんらしいサイン

私の勤めている病院で小児神経科医も含めたカンファレンスで色々議論して、我々小児科医が「これはけいれんだ!」と思うときは、どういう時なのか、言語化してみた結果は以下の通りです。

 

けいれん中意識変容がある=意識障害がある

けいれん中は意識障害があるのが普通です。意識障害についての詳細を勉強したい方はこちらも参照してみて下さい。

こどもが元気って何?

簡単に確認する方法としては、呼びかけて正常な反応が返ってくるか、視線が合うかということです。呼びかけても反応がない場合はけいれんの可能性が高いです。逆に全身けいれんしているように見える時に、視線が合って受け答えが出来ていればそれはけいれんではない可能性があります。

 

けいれん中開眼している

けいれん中は目を開けている、見開いている場合が多いです。目を閉じている場合はけいれん以外のものの可能性が高まります。

 

けいれん中顔色不良(チアノーゼ)を認める

けいれん中は呼吸が浅くなります。「息をしていないように見えて不安だった」と良くご家族から聞きますが、本当に呼吸が止まってしまうことはまれです。呼吸が浅くなる結果、顔色が悪くなったり唇や手足が青白くなります。これをチアノーゼといいます。

激烈な急性脳症では、長時間けいれんが止まらないことが多いです。その結果、呼吸が止まり心臓が止まることはありますが、やはりまれです。

 

けいれんが一瞬で終わらない

真のけいれんの場合はさすがに一瞬では終わりません。良くある熱性けいれんやてんかん発作で起こるけいれんは2分前後は続くことが多いです。一瞬で終わるものは、後で出てくるミオクローヌスという現象であることが多いです。

 

発作が律動的な動きで、抑えようとおもって他の人が抑えても抑えられない

けいれんの動きは規則正しく早い動きです。力が一瞬入り、そのあと脱力するような動き=ピクン・ピクン・ピクンという動き、言い換えると“行き”の動きは急峻で“帰り”の動きはゆっくりという動き方が特徴的です。

ぬる~っとした遅い動きや規則正しくない動きはけいれんらしくないサインです。

例外としてはグーっと力が入り続けて体が突っ張り続けるのもよく熱性けいれんやてんかん発作で見られる症状で、これは強直性発作と言います。

また、他の人が抑えようと思ってもけいれんの動きは押さえつけることが困難です。これもけいれんらしいサインの一つだと思います。

 

けいれんの動きが終わってすぐには目覚めない

一般的に全身性のけいれんがあった場合、けいれんが止まった後は目を閉じて眠ったような時間を挟んで、徐々に意識レベルが回復してきます。眠ったような時間がない場合でも、ぼーっとしている時間を挟んでから意識レベルが回復します。けいれんが止まった直後に受け答えが出来るようになりました!とお母さん・お父さんから言葉が返ってきた場合は、「ん?それはけいれんではないかも?」と疑うエピソードとなります。

 

これら6つの項目が真のけいれんらしいサインになります。けいれんという訴えで初めて受診する患者さんを診る場合、私はこれらのサインが見られるかどうかを問診でお母さん・お父さんに聞いています。お母さん・お父さんも初めてのけいれんのepisodeにとても動揺していることが多いので、全てきれいに確認できることはなかなかないですが、大体真のけいれんなのかそうではないのかは問診で判断することが出来ます。

 

病院で確認できる真のけいれんらしいサイン

これはお父さん、お母さんにはあまり意義がない部分かもしれませんが、病院にいるからこそ確認できたり、医者だからこそ確認できるサインについても触れておきましょう。

病院の救急外来だとけいれん発作を察知するのに各種モニターが使えます。モニターは、生命徴候と言われる生きている人が常に発しているシグナル(心拍数、呼吸数、酸素の充足度)を可視化する装置です。見たことがある親御さんも多いかもしれませんが、胸につける簡易型心電図と、指につける酸素のモニターがよく用いられます。これらで観察できる心電図・脈拍数と、体内の酸素の充足度(=酸素飽和度と言います)が、けいれんを察知するときに有用です

・突然脈拍数が上昇する

・突然酸素飽和度が降下する

というようなepisodeがけいれんの動きと同時に起こると、医者はけいれんが起きた!と思います。実はガクガク、ピクンピクンといった動きや手足がピーンと突っ張る動きがないけいれん発作も存在するのですが、何も体の動きがない時でも、突然脈拍が上昇する・酸素飽和度が低下するときには、医者は可能性としてけいれんを想起します。

 

けいれんかも、、と思った後は医者は診察をするわけですが、ここでもポイントがあります。

・瞳孔が散大している

・人形の目現象が陰性である

けいれんしている患者さんの多くは、けいれん中であれば瞳孔が大きくなっています。瞳孔が散大するなんて死んでるみたい!と思われるかもしれませんが、ご心配なく。けいれんが止まれば瞳孔は元通りの大きさに戻ります。また、抗けいれん薬を使用してけいれんが止まったとき(=医者はけいれんが頓挫(とんざ)したと言います)にも瞳孔は縮小します。いずれにしても、医者がこれはけいれんかも!と思ったときには瞳孔を確認することが多いです。

また前述の「人形の目現象」という眼球運動の生理現象を利用して、今まさにけいれんしているのか、止まっているのかを判断する材料にすることもあります。

「人形の目現象」というのは、人の頭部を急速に上下左右に動かしたときに、眼球だけ元々向いていた方向に残る現象です。

今ブログをご覧の方に試してもらうとすると、ぼーっと前を向いた状態で頭を早く左右に振ってみてください。おそらく目は前方を向いていて視界が急激には変わらないはずです。人形の目現象は「陽性」であることが「正常」です。つまり人形の目現象が「陰性」(=頭部を動かすと目が固まったようにそのままついてくる)の時はけいれんが今まさに起きているかもというわけです。

人形の目は動かない、って思う人も少なくないですか?自分もそうです。だから、人形の目現象はどうしても「頭部を動かした時に目が固まっていてついてくる」のが陽性のような気がしていつも混乱してしまうのですが、これは間違いです。繰り返しになりますが、「頭部を動かした時に目が固まっていてついてくる」のは「人形の目現象の消失」で「異常」です。

瞳孔の散大、人形の目現象の消失は、いずれも脳幹機能の低下を指し示す事象です。けいれんのまさに真っ最中に脳幹機能が軽度に低下しているかどうかは不明ですが、これらの現象はけいれんが真実のものか否かの区別に使われます。

 

そして診察の後は検査です。病院で可能なけいれんか否かを判断する一番重要な検査はもちろん「脳波」です。最近では、ビデオ脳波同時記録という検査も良く使われるようになっていて、脳波で異常な発作波が検出されているときに、実際に症状として同時にけいれんがみられるかということも一緒に評価できる検査が可能になっています。

 

まとめ

・けいれん性疾患の多くは病院に来た時には止まっています。お母さん・お父さんから得られる情報が大事です。家で確認できる真のけいれんらしいサイン6個を確認しておきましょう。

・病院でけいれんした場合には診察、検査などでそれが真のけいれんなのか確認する手段があります。

 

 

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