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こどもが初めて痙攣しました!という話を医者は信じません その②

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こんにちわ、アシュアです。この投稿は前回の『こどもが初めて痙攣しました!という話を医者は信じません その①』の続きです。

ここではけいれんに間違われる状態や疾患、さらに真のけいれんと偽のけいれんとの区別が難しいケースについて書こうと思います。

その①をご覧になっていない方は、是非そちらもご覧になってください。

こどもが初めて痙攣しました!という話を医者は信じません その①

 

けいれんに間違われる状態や疾患

お母さんが「けいれんしました!」といって病院にこどもを連れてきた時に、実際にはけいれんではなかったケースも多々あります。成書を当たると神経の難しい疾患も絡んでくるので全てについて概説することはできませんが、自分や他の先生が遭遇したよく見るケースについて書いていこうと思います。

良く経験されるのは、『悪寒戦慄』です。熱が上がってくるときに手足が冷たくなって、顎がガクガク鳴ってしまうアレです。特に初めてのお子さんのお母さん・お父さんの場合は、子どもが高熱を出してガクガクしているとやはり「けいれんなのか・・・!?これがけいれんなのか?」と心配になることは理解される状況です。救急車で来院するケースもあります。基本的には意識障害はなく、視線は合うことがほとんどですので、しっかりお母さん・お父さんから問診で情報が取れれば、真のけいれんとは区別が可能です。

例えば『その①』にも少し記載しましたが、ミオクローヌスと言われる生理現象です。学生のとき、授業中に居眠りをしている人が突然ビクン!と体を動かして、机がガタッ!と動いて回りの人がびっくりする、アレです。

泣き入りひきつけという病気もあります。典型的には6か月~1歳頃の乳幼児が激しく泣いた後、息を吐いた状態で呼吸を停めて、顔色不良、意識喪失けいれんや全身の脱力を起こすもの、と定義されます。基本的には幼児期には自然軽快する良性疾患ですが、自分が経験したケースでは、ある赤ちゃんが泣きまくったあとに目の前で呼吸を止めて顔面が黒くなって(いわゆる低酸素によるチアノーゼです)ぐったりしてしまい、慌てて酸素投与とバッグ&マスクで救命処置をしたことがありました。心臓が止まったりはせず自然に回復しましたが、「これはやばい!心肺停止してしまうかも!」と思うような激烈な発作でした。泣き入りひきつけは通常は無治療で観察だけで自然に良くなりますが、症状が強い・頻回なケースでは基礎疾患の検索や薬物治療が行われます。ベースに鉄欠乏性貧血がある場合にはその治療を行うと軽快したり、抗てんかん薬を内服する場合もあるようです。

他にも、「チック」と言われる特徴的な動きを伴う病気をけいれんしたといって病院を受診するケースもあります。チックは突発的、急速、反復性、非律動、常同的な運動、感覚あるいは発声の不随意的異常と定義されます。意識は障害されることはなく、短時間であれば随意的に症状を抑制することができます。周りにいませんか?何かの作業をしているときに、首を一瞬傾げたり、顔を一瞬しかめたりを繰り返す人です。成人になると症状は軽くなると言われていて、小児期は何らかの社会的なストレスを背景にして出現することがあり、家族が心配して病院に連れてくるという形になります。背景に精神疾患であったり、注意欠陥多動性障害が隠れていたりするのでそちらに対する配慮も必要になります。

そして稀に経験されるのが「乳児性自慰」です。多くは女児の乳児・幼児で経験されますが、典型的な発作の形として足を交差して顔を真っ赤にして全身硬直して発汗する、のでやはりこれもけいれんした!という訴えにつながります。乳児性自慰と診断を伝える場合、家族は動揺することが多いのですが、乳児性自慰はいわゆるマスターベーションでいうような性的な意味合いはないとされている点が重要です。この点をしっかりお話すると安心される方が多いです。

その他、呼吸の問題であったり、心臓疾患(不整脈など)であったりが失神という形で現れると、見た目がけいれんと間違われることがあるので、注意が必要です。

そして最後に「心因性非てんかん性発作」についても触れておきたいですが、これは次の項でお話しましょう。

 

真のけいれんと偽けいれんとの区別が難しいケースとは

真のけいれんと偽けいれんの区別が困難な病気についても、成書をあたれば色々と書いてあるのですが、今回は「心因性非てんかん性発作」について書くこととします。

心因性非てんかん性発作は、一般的にいうヒステリーと近い概念だと思いますが、現在はヒステリーという言葉が色々な印象を持ち疾患に対して陰性感情を与えやすいために医学用語としては使わないようにとされる風潮があります。心因性非てんかん性発作は、「突発的に生じるてんかん発作に類似する種々の精神身体症状で,身体的生理学的発症機序をもたないもの」と定義づけられています。思春期以後の症例が多いですが、小学生でも経験されます。簡単に言えば、てんかん発作に見える発作を繰り返すけど、症状の発生を説明できる異常がないということです。逆にてんかん発作は、脳の一部分から異常な電気信号がでることでけいれん発作を繰り返す病気であり、脳波で異常所見が出ることが多いため区別されます。てんかんでは効果がある抗てんかん薬は、心因性非てんかん性発作では、効果がある異常がそもそも本人にないので、もちろん効果がありません。

自分が経験した症例の体験談ですが…

ある日自分が病棟で仕事をしていると、外来の看護師さんから電話がありました。

『先生!中学生の女の子が外来でけいれんしちゃって!体も大きいし助けに来てください!!』

私『わ、わかりました!すぐ行きます!』

すぐに駆け付けてみると確かに痙攣している!!

、、、けど何かおかしい、、、

右手と左足がけいれんしている(ように見える)

目は閉じていて、声をかけると目は開けないがうなずく!

顔色はよいし、瞳孔は散瞳していない

人形の目現象も陽性(=これが正常です)

モニターをみてみると、脈拍数は全くの正常値で酸素飽和度も全く下がっていない!

普通、四肢の左右にけいれんがあるということは脳の中の異常な電気信号は脳全般に広がっているはずで、その場合もちろん意識はないはずです。

『その①』で書いているように普通はけいれん中は脈拍が上がるし、呼吸状態も悪くなります。

これは変!けいれんではないのかも…

まずは冷静に電子カルテで病歴をさらう。すると以前にも同じような発作を起こしていてその時は抗けいれん薬が全く効果がなく、様子を見ていたらそのうちけいれんが止まったとの記載あり。

これは抗けいれん薬投与はひとまず待って、逆に薬以外の方法を一度は試すべきだと考えました。

これからけいれんを止める薬を入れるね!

と声をかけてから試しに生理食塩水を静脈注射してみました。すると、けいれんは数分かけてゆっくりと止まってきて、30分くらいすると意識が覚めました。

 

とこんな風に少なくとも看護師さんはけいれんだ!と思ってしまったわけで、医療者でも騙されることがあります

実は、心因性非てんかん性発作は、真のてんかん発作を持っている患者さんに合併することがあったり、軽度知的障害の患者さんに合併することがある疾患なので、事態はさらに複雑です。

色々書いてきましたが、発作が本物か偽物かを区別することは大事ですが、嘘を暴くことが目的ではないことは強調しておきます。

患者さんは精神的ストレスに対する一時的な対処方法として、偽けいれんを起こしていることが多いので、偽けいれんをしっかり区別してあげたその先には、発作に対する薬物治療が不必要であることを伝えてあげることや、背景にある精神的ストレスに対する対応方法の構築のために精神科と連携をとる契機にしてあげることが大事です

 

まとめ

・けいれんと間違えやすい状態や疾患はたくさんある

・心因性非てんかん性発作は、医療者でも真のけいれんと間違うことがある。その①で書いたポイントを見極めれば、真のけいれんと偽けいれんの区別ができ、治療のステージを先に進めることが出来る

 

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