こんな症状、あなたならどうする?

北米のPICUに入院した新型コロナウイルスの子ども達のまとめから見えること

こんにちは、Dr.アシュアです。

日本では、現在新型コロナウイルスの患者数が少し減少傾向になってきていますが、第2波・第3波も警戒される中、まだまだ自粛ムードは続くような状況ですね。

今回は、JAMA pediatricsからでた論文をご紹介します。

この論文は北米から出たもので、新型コロナウイルスにかかった小児患者が、子どものICU=PICUへ入院した例を集積しまとめた横断研究です。ICUに入ってしまう新型コロナウイルスの小児例はそもそもどんな背景のあるお子さんだったのか、どんな症状が出て、どれくらいの治療が行われたのか、一体どんな経過になったのか、などがまとめられており、とても興味深い内容でした。

さて主役に登場して頂きましょう。

JAMA Pediatr. Published online May 11, 2020. 

Characteristics and Outcomes of Children With Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Infection Admitted to US and Canadian Pediatric Intensive Care Units

Lara S. Shekerdemian, MD, MHA; Nabihah R. Mahmood, MD; Katie K. Wolfe, MD; et al

 

では見ていきましょう。

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背景と目的-Background and Objective

COVID-19のパンデミックは、重症になった成人に、前例のない犠牲を引き起こしました。

入院中の小児におけるCOVID-19感染の負担は、成人よりも少ないというエビデンスはあります。

たとえば、2020年4月6日に発行された最近のCDCの週報では、米国におけるCOVID-19感染の既知の150,000症例の1.7%が子供であると報告しました。そしてさらに、2572人の小児症例のうち、15人がICUに入院し、3人が死亡したことが報告されました

今日本でも同様な状況だと思いますが、発表されている成人での発症率・死亡率と比較しても小児例ではそもそも患者さんが少なく、重症患者さんも少ないということは、この週報でも確認できますね。しかし現在の所、小児集中治療室(PICU)でのCOVID-19症例についての報告は限られています。

そのため、今回著者らは、北米のPICUにおけるCOVID-19の小児例の状況をまとめることにしました。発症の様式、既往疾患の存在、重症度、治療的介入、臨床経過、および初期の転帰について横断的に情報を収集することとしました。

今回の報告は、横断的研究なので、”ある期間にどのようなことが起こったか”という事実をまとめたものになります。

間違ってはいけないのは、この結果から、コロナウイルスの重症化にこれが関係していそうだ!とか、この病気を持っていると重症化しそう!といったような因果関係を”予測はできる”けれども、因果関係が”ある”とは言えないということです。

この種の研究では、因果関係について信頼のおける結論を出すことはできません。ただ、事実を記載しただけです。

ここは、とても大事な所です。

 

方法-Method

2020年3月14日~4月3日までに北米のPICUに入院した46名のCOVID-19陽性の小児を横断的に研究しました。

患者さん達は、2020年4月10日までフォローアップされました。1週間だけのフォローアップ期間なのでとても短いですね。

収集された情報を列挙しますと、

この論文で収集された情報

・年齢と性別

・基礎疾患(心臓病、発達遅延、糖尿病、免疫不全、悪性腫瘍、医学的複雑性、肥満、移植後、および気管切開)

・発症の様式(無症候、呼吸器症状、胃腸症状、神経症状、または循環器症状)

・臓器不全の存在と性質

・呼吸へのサポート治療が最大どこまで必要になったか(挿管、非侵襲的換気、高流量の鼻カニューレ、酸素療法、または呼吸サポートなし)

・呼吸の補助治療(一酸化窒素の吸入と腹臥位換気)

・追加の臓器サポート治療(血管作動薬、腎代替療法、血漿交換、ECMO)

・COVID-19感染に対する薬物療法(ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン、レムデシビル、およびトシリズマブ)

医学的複雑性とは、発達遅滞や遺伝子異常をなどに関連して技術的サポート(気管切開など)に長期間依存している小児、と定義されていました。

これでもすごく分かりにくいですが、おそらく生活をするために気管切開や胃瘻や人工呼吸器などの医療器具を要する小児患者さんという理解で良いのではないでしょうか。

 

さらに、様々なPICUがあるので入院基準がどうしてもばらつくのは仕方ないと明記した上で、疾患の重症度を4段階に分けて定義して情報整理をしていました。

この論文での疾患の重症度の定義

・軽症⇒発熱、のどの痛み、咳、および/または呼吸困難のない筋肉痛

・中等症⇒発熱、呼吸困難、および/またはCOVID-19肺炎と思われる胸部画像を含み、かつ 酸素は必要ないか、長期に呼吸サポートを受けている場合は使っている医療機器のサポートを強化させなくても良い場合

・重症⇒発熱、呼吸困難、および/またはCOVID-19肺炎と思われる胸部画像を含み、かつ 酸素が新たに必要になるか、換気サポートを強化せざるを得ない場合

・最重症⇒機械的換気を必要とする呼吸不全、急性呼吸窮迫症候群、ショックまたは全身性炎症反応症候群、および/または多臓器不全

 

結果-Results

まず今回の横断的研究の対象となった48人の子どもは論文では21歳以下となっていました。

25人(52%)が男児で、年齢の中央値は13歳(四分位範囲が4.2-16.6)でした。1歳未満も8例(17%)含まれていました。

 

患者データを収集した46か所の病院のうち、40か所がアメリカで、6か所がカナダでした。カナダの病院6つを含む30か所の病院では、COVID-19の小児のPICU症例はゼロでした。

残りの16か所の病院のうち倫理委員会の承認がとれた14か所でPICUにCOVID-19患者を受け入れていました。2020年3月14日~4月3日までの間に58人を受け入れていました。このうち83%が21歳未満だったらしいです。

つまり、なんと子どものICUに21歳以上の成人が10人も入室していたことになるわけです。

成人のICUが一杯になってしまい、あふれた症例なのかもしれません・・・。これはかなりの大ごとですよね。

 

それでは、ICUに入院した新型コロナウイルスにかかった小児のまとめの結果を示していきましょう。

結果①

・40人の患者(83%)には、基礎疾患があった

・35人(73%)は呼吸器症状を呈した

・18人(38%)は人工呼吸器による侵襲的換気を必要とした

・11人(23%)は2つ以上の臓器障害がでた

・1人の患者(2%)にはECMO(人工心肺)が必要だった

 

8割以上が基礎疾患を持っていたお子さんだったというのは、驚きました。

基礎疾患の内訳のみ取り出して、すこし深掘りしてみますと…

結果②基礎疾患について

医学的複雑性をもった小児が19人(40%)で一番多かった。

続いて免疫抑制状態や小児がんの小児が11例(23%)、肥満が7人(15%)、糖尿病が4人(8%)、てんかんが3人(6%)、先天性心疾患が3人(6%)と続いた。

医学的複雑性は、上でも説明していますがおそらく胃瘻・気管切開・人工呼吸器などの医療機器を必要とするお子さんのことを示していると理解しておけば良いと思います。

 

またCOVID-19に対する治療としては、ヒドロキシクロロキンが最も使用されていたようです。

また予後についてですが、この論文報告の時点で、31人(65%)が退院しており、2人(4%)が死亡しています。

死亡した患者は12歳と17歳でした。どちらも基礎疾患と多臓器不全の発症があり、1人はCOVID-19の発症前にグラム陰性敗血症になっていました。15人の子供(31%)はまだ入院しており、そのうちの1人はまだECMOを受けており、5人は危険な状態にあるとのことでした。

 

結論-Conclusions

ICUに入院した成人のCOVID-19患者の死亡率は高く50%~62%と報告されていますが、今回の論文の報告次点での小児の死亡率は4.2%とかなり低い値でした。一応確認ですが、”PICUに入院した小児例の死亡率”なので、それなりに高いです。

成人での報告と同様に、小児でのICU入室例において多くの小児が基礎疾患を抱えていました。”肥満”は成人でもCOVID-19の悪化因子として注目されており、小児でも重症化のリスクになるかもしれませんね。

最後に著者らは、インフルエンザと新型コロナウイルスを比較して、小児の場合はコロナよりもインフルエンザの方が怖いですよ!と強調していました。

2020年4月28日の時点で、CDCは14歳以下の子供でCOVID-19感染に関連して8人の死亡を報告していますが、2019年から2020年のシーズン中にこれまでに14歳未満で169人のインフルエンザ関連死亡が発生しています。これらのうち81件は2020年に発生しています。

著者らは、こういったデータを引用して、北米でCOVID-19のパンデミックが起こっている最中でも、小児はCOVID-19よりもインフルエンザによるはるかに大きなリスクに直面しており、継続的に感染予防を継続していくことが必要だと、結んでいました。

 

論文の限界点としては、この報告ではフォローアップの期間が極端に短いので、状態が不安定であった小児例が不幸にも今後死亡した場合、最終的な死亡率が上がるかもしれないという可能性はあります。PICUに入院した新型コロナウイルスの小児の死亡率 4.2%は、暫定的なものということですね。

また、冒頭でも書いている通り、事実をただ記述しているだけなので、基礎疾患が悪化に関連があるかどうかとか、治療法がこれが効いたかどうかとかの因果関係については全く何とも言えません。

 

なにが分かったか

結論を記載しておきます。

今回の論文は、北米とカナダの小児集中治療室(PICU)に入院した、新型コロナウイルスの子どもの症例を集めて、様々な情報をまとめたものでした。

それによって分かったことは…

何がわかったか

・PICUに入院したCOVID-19の小児のうち、80%以上が基礎疾患を抱えていた

・COVID-19の小児例における重症例の生存率は、成人患者で報告されたものよりもはるかに優れていた

また、これらの結果から著者らが「小児の場合は、COVID-19よりもインフルエンザによる重大な病気のリスクがはるかに高い」と強調していたことは、とても印象的でした。

また、今回の論文では、PICUに入院した小児の例で2例死亡例の報告がありました。

いくら新型コロナウイルスはこどもの場合重症化するリスクが低い、と言っても、たくさん症例を集めればやはり残念な結果に至る小児の症例も存在するということもまた、事実です。基礎疾患を持っていた症例が多かったというのも大事な情報でした。

そして最後に再度繰り返しておきますが、今回は横断的研究なので、事実を単に記述しまとめたものでした。今後の研究で、それぞれの因子の因果関係などさらに明らかになってくると期待したいですね。

今回は以上となります、何かの役に立てば幸いです。

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